2014/12/11

悪をなすもの

2014年12月根雪の始まり

 いきなり冬になりました。雪は11月にも一度降りましたが、 やはり融けてしまいました。暖かいなと思っていたところへ、今度は根雪になるでしょう。12月ですからあたりまえです。ただ、雪がなければできることがあるものですからつい、いつまでも降らないような気になっていただけです。さいわいこの冬の薪は前日に作り終わっていましたので、これは助かりました。最大の冬支度ですから、やや焦ってはいました。年とともに薪割りは苦痛ですが、この薪のどこにまさかりを入れれば一発で割れるか、あるいはこの節は何回で割れるか、といった多少の闘争心は残っているようです。

 さてこの三ヶ月余り、私としてはひたすら下請け仕事をこなしていました。もちろん工場労働の人たちに比べれば、話にならない「ひたすら」ではあります。午前中はまず30分程かけてストレッチをしてから2時間余り。午後は昼寝のあと2時頃から7時まで。途中犬の餌やりなどで中断しますから、正味4時間程。一日の仕事は合わせて6時間程度となります。夕食は焼酎を飲みながら新聞を読むと、すでに朦朧としてきます。疲れが激しい時はソファで寝てしまうことがあります。少し余裕のある時はメールのチェックをしたり、オークションを眺めたりしながらぐずぐず何時間も過ごしてしまいます。こんなふうに一日が終わっています。体力がひどく無くなりつつあります。そのくせ寝るのは12時を越えるのです。

 仕事をして、焼酎飲んで寝る。低単価を補うべく根を詰めるような仕事をして日々を送っていると、水野和夫の言う「国内”周辺”論」(水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」)は正しいなあと実感します。家具業界はただでさえ構造不況業種となって長い時間が経っている業界ですし、まして今や低賃金の途上国で作るのが常識でさえあるわけですから、国内で家具の下請けをするとなれば途上国並みの低賃金になるのはある意味正しいとも言えるわけです。しかし、日本では生活は成り立たない。そういうレベルでの単価の仕事をしています。

 こんな毎日ですが、何冊か本も読んでいました。安倍自民党政治が大企業とアメリカのご用訊きと化し(この政権で始まったことではありませんが)、度を超した国民無視の路線を暴走するのを見るにつけ、この事態に自分は何ができるのか、という動機からでした。そうこうしているうちにいきなりの衆議院解散、総選挙となっています。まあ、ここまでこけにされて主権者である国民は、この選挙で安倍政権をどう判断するのでしょう。

 赤川次朗によれば、哲学者ハンナ:アーレントは「考えることをやめた時、平凡な人間が悪をなす」という言葉を残しているそうです(「図書」2014年12月号)。私は彼女の業績についてほとんど知りませんが、ナチスのユダヤ人問題担当部長であったアイヒマンの裁判を傍聴した「アイヒマン裁判」レポートを発刊したことで知られているそうです。上の言葉はこのレポート中で言われたのかどうか調べていませんが、少なくともこの言葉につながることを彼女は述べています。「ごく普通の人でも、特定の条件下では、極悪の所行に、特に罪の意識なしに、あるいは命令を履行することを義務と心得る道徳意識に基づいて、荷担する傾向を持つ。そこでは、被害者も加害者の企図に巻き込まれ、協力を余儀なくされる状況に追い込まれる」(徳永恂「アーレント『悪の陳腐さ』をめぐって」/「図書」2014年12月号)

 これまであらゆる形で多くの人々が言及してきたことですが、先の戦争が終わってから大多数の国民が「自分たちはだまされた」という表明をしたそうです。いまさら言うまでもありませんが、これはまさに上記の言葉のように「特に罪の意識なしに」軍部の意図に協力したことを証明しています。だから始末が悪いのです。政治家や軍人やそのお先棒を担ぐもの達が先導する「悪行」に、言われるがまま唯々諾々と従う。だって、お上だし、金持ちだし。この程度の言い訳で結果として巨悪をなしてしまったという自覚は皆無です。その後70年、ひたすら金儲けに明け暮れてきたこの国民は、今また恐るべき悪をなそうとしています、もちろん罪の意識など毛頭無いままに。もし今度の総選挙で自民党が多数を占めたたら、日本という国はどうなっていくのかについてもまた、考えようともしないようです。罪の意識だけでは無く、想像力さえない欠陥国民と言えば、言い過ぎでしょうか。

 昨日2014年12月10日から、「特定秘密保護法」が発効しています。これが安倍自民党が向かう未来への第一歩です。このあと、集団的自衛権行使、武器輸出、原発再稼働、原発輸出、法人税減税、等々、なだれを打って実行していくことになるでしょう。もはや民主主義や、立憲主義、国民の格差拡大ばかりか子供の貧困、原発の廃棄物処理、沖縄の基地、などどうでもよいから、とにかくアメリカとグローバル企業に気に入ってもらえる国家になるのだ、ということは露見しているのです。資本主義末期の国家の選択としてはあながち間違いとも言えない部分があります。しかし、詐欺師のように流暢にしゃべる安倍首相が、いくら「国民の幸せ」を言ってもそれがただの言葉であることは疑う余地がありません。前回のこの便りでも言いましたが、なにせ国民は政治屋、官僚、グローバル企業の「えさ」にすぎないのですから。

 おこりましょう!怒りを表明しましょう!

 せめて14日の総選挙は自民党以外に投票しましょう!

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