過去の楓舎小屋便り

2019/1/24

北方領土は取り返せない!

沖縄のビール「青い空と海のビール」の空き缶 

 何年か前の誕生日に娘がくれたビールの詰め合わせの中に、沖縄の「青い空と海のビール」がありました。その美しい「青色」がせつなくやるせなく、とても捨てる気になれず仕事場にぶらさげて日々眺めています。1945年の沖縄戦で亡くなった12万人とも言われる民間人犠牲者が、空と海をなおこんな風に美しく保ってくれている、なんてとんちんかんな思いと、今なお今度は自国の権力に痛めつけられている沖縄のことが、指先の太いとげのように刺さっています。美しい沖縄の陸も海も血と銃弾で埋めようとする神経の存在を信じられませんし許せません。これは日本政府ばかりではなく、米軍のこんなありようを許しているアメリカ政府も同罪です。アメリカは「民主主義の総本家」だというのは建前であるということがよくわかります。所詮人種差別を乗り越えられないあの国に支配されている腹立ちを押さえることはできません。

 ところで何日か前から安倍首相がロシアとの平和条約締結の交渉をしています。「2島返還」でもよいからとにかく平和条約を結ぼう、なんてできるわけがありません。かつて歯舞、色丹の2島返還に日本が傾いたとき、アメリカの国務長官ダレスに「恫喝」されて仕方なく絶対不可能な「4島一括変換」の遠吠えに戻らざる得なかったように、今度もそのうちアメリカの横やりが入ることでしょう。ロシアが要求している「米軍基地を作らせない」なんて確約できるわけがないのです。

 安倍政権が何年か前から秘密保護法に始まる「アメリカのための法律」を立て続けに成立させたのに続き、今度はどんな命令があってこんなにあっさり「4島一括変換」をあきらめたのか、と考えると、どうしたって基地を作りたい米軍の意向があったに決まっています。しかし残念ながらポツダム宣言もろくに読んだことがない安倍晋三に、ロシアとの領土交渉はできません。「固有の領土」なんていくら叫んでも、戦争に負けた事実を認めたくないのですからロシアとの歴史認識が一致するわけがないのです。戦後70年以上あたかも島々が戻ってくるかのような幻想を元島民にまきちらしてきて、ここへ来て結局主権回復どころか、「やっぱり島は取り戻せませんでした」となるはずです。あるいは、ロシアに金だけとられ何の成果も手にできない可能性さえあります。

 だいたい現在の日本の国土は全土がアメリカの治外法権になっている(例えばアメリカ軍人軍属の犯罪に対し日本には基本的に裁判権がありません。他にも全国どこでも好きなところに好きなように基地建設が可能であり、好きなだけ駐留できます。詳しくは「知ってはいけない-隠された日本ん支配の構造」矢部宏治著 をお読みください。)というのに、北方領土は日本固有の領土だから返せ、主権も日本のものである、なんてどのツラ下げていうのか笑止千万です。戦争に負ければ何もかも取り上げられるのは古くからの常識です。固有もくそもありません。北方領土を返せ、はすべてアメリカの都合です。元島民などダシにされているだけです。もし本気でそれを言うなら、まずアメリカからきちんと独立することです。こんな占領状態を終わらせることです。

 さあ、ロシアとの交渉はどんな結末になるか楽しみです。

 

2018/12/11

人口減少はそんなに恐ろしいことだろうか?

 いわゆる入管法(出入国管理および難民認定法)改正案が、三権分立を空洞化させようとする現政権の意図のもとで可決されました。来春2019年4月からのスピード施行となります。中身がほとんど何も決まっていない容れ物だけの「法案」を決めたからといって、それは法といえるのでしょうか?内容のほとんどを政省令で決めるのは、これは行政が立法権を事実上国会から奪っていることにならないでしょうか?明らかに現政権が、憲法改正とは別になしくずしに憲法の柱の一つである三権分立を空洞化しようとするものです。こんなでたらめを、なお自民党議員諸君は黙って見過ごしています。立法府を構成する者としての自覚がないどころか、税金泥棒という犯罪者であるとさえ言ってもよいと私は考えます。立法の手続き他詳細については稿を改めます。ここでは、この法案の立法趣旨として安倍首相がいいつのる「人手不足」について考えてみます。

 12月2日付け毎日新聞「時代の風」で、日本総研主席研究員・藻谷浩介が鋭い指摘をしています。「単純な数字を確認すれば、入管法改正は愚作だとわかる。外国人労働者の増加は、日本の人手不足解消の切り札になるどころか、解消の糸口にすらならないのだ。」それはなぜか。「仮に就業率が今の水準のままであれば、就業者数は15〜20年に120万人減少し、20〜25年にはさらに203万人も減ってしまう。在留外国人を数十万人程度増やしても、到底この欠落を補えないばかりか、就労先の地域の抱える社会的コストは加速度的に上昇する。つまり入管法改正には”百害あって十利しかない。”」ではどうすればよいのかにつき、藻谷は2つの策をあげています。資本主義の流れからいえば「低賃金労働に依存するすべての業種・企業を待つ未来は結局『賃上げできるビジネスモデルへの転換か、廃業か』どちらかなのである。」少し長めのスパンで考えるなら、これしかないと私も思います。

 もう一つの現実的な人手確保策として少子化対策をあげています。子育てでも女性就業率でもチャンピオンの島根県を例に、「法人税率でも上げて妊娠中の女性の医療費を完全無料化するほうが、少子化を防いで結局、企業のためにもなるだろう。」と、妊婦の負担軽減に財源をまわすことこそ危急の対応策だと断言しています。大変説得力のある論です。官僚にも政治家にもせめてこの程度の議論をしてほしいものです。

 また、甲南大学教授・前田正子は「図書」12月号で短いながら人口減少の原因について触れています。「バブル崩壊以降、個々の企業は人件費を削り、正規採用を減らして生き残りました。」その結果、「企業は生き残りましたが、その代わりに若者が安定した職と収入を得ることができず、『結婚・出産はぜいたく品』になってしまったのです。これによって少子化いっそう進みました。・・・若者を犠牲にした社会は、その未来を危機にさらすことになったのです。」これまでも散見した「非正規雇用が結婚をさせないか、よくても遅らせている」という説が、がぜん有力化します。確かに、国破れて山河ありではありませんが、「人消えて会社あり」なんてしゃれにもなりません。企業経営者たちは、都合良く働く労働者ばかりを追い求め、あげくにこんな事態が出来することなど考えなかったのでしょうね。ただただ利益優先、会社存続のみを追い求め、今度は人手が足りなくなったからと政府の尻を叩いて(安い)労働力(=外国人労働者)を求める。「女性や障害者の利用」などという金も手間もかかる労働力ではなく(うかうかそんな連中を雇用しているといざというとき首を切るのが大変になる)、都合良く首を切れる外国人に限る、なんて考えたのかどうか知りませんが、どうも現政権の行き当たりばったりの立法行為を見ているとそう考えても無理はなさそうです。

 それにつけても、外国人労働者が必ず日本に来るという前提の議論がほとんどです。今世界中で労働力の取り合いが始まっているというのに、日本語教育や住宅供給など何の社会的制度も整わない日本に、はたして法律を作ったからといって外国人労働者がきてくれるのでしょうか?いかにも企業に都合の良い法律や制度ばかりでは日本は選んでもらえないのではないでしょうか?そうなったら企業は今度は何を政府に求めるのでしょうか?

 さて人口減少が人手不足の根本的な原因です。一体それの何が悪いのでしょうか?かつて今よりも人口の少ない時代はありました。人々はそれなりに生き社会は破綻することもなく回っていたのです。人手がなければ事業を縮小すればよいだけです。これまでと同様の利益を求めようと考えるから人手が足りなくなります。単純なことです。そのうえ何もかも今突然始まったことではないのに、これまでの怠慢無能に気がついたとたんにうろたえる愚かさは、資本主義的拡大再生産という強迫観念、あるいは年金・健康保険などの制度を維持できなくなるという役人根性にとらわれているからです。官僚も政治家も国民さえ、こんな事態はとっくの昔からわかっていたのに差し迫るまで検討することも、まして準備することなどかんがえもしなかったのです。藻谷浩介ではありませんが、国勢調査の簡単な数字だけからでもいくらでも予想できたはずです。嫌なことは見ないふり、なかったふり、これが日本人の悪しき精神性かもしれません。70年以上もアメリカの属国であることを知らないふりして金を追い求めているのと同根です。

 おっと人口減少です。堺屋太一が12月8日付け毎日新聞「論点」で「人口減少の恐ろしさを理解してほしい。」と縷々述べています。だから何が恐ろしいのか私には理解できません。東京の一極集中も地方の過疎化も、人口減少前提の議論をすればよいのではありませんか?私自身について言えば、何も困ることはありません。困る困ると騒いでいるのは資本家・官僚の支配階級だけです。このままでは今まで以上に儲けることができなくなるから、権力維持ができなくなるから。こんな連中の大言壮語にだまされてはたまりせん。歴史上世界を制した国々はいつか必ずその力を失いました。日本は覇権国ではありませんが、少なくとも先進国とか一流国なんて思っているのかもしれません。しかしアメリカの属国であることは世界の常識です。そんな国の人間が「一流国家」なんて考えることがいかに笑止か、安倍晋三には想像もつかないことでしょう。権力の絶頂にあってその行使しか眼中にない者に、諫言する者の居ない政権の末路が見ものです。

 

 

back number

2018
2月3月5月6月8月10月11月
2017年
1月3月5月6月8月9月11月
2016
1月2月4月5月6月7月8月9月11月12月
2015
2月5月6月8月11月12月
2014
1月3月4月5月6月8月12月
2013年
2月4月5月7月8月11月12月
2012年
3月4月6月8月9月11月12月
2011年
1月2月3月5月7月8月10月12月
2010年
1月2月4月6月8月
2009年
1月3月5月7月9月11月12月
2008年
1月3月5月7月8月9月11月
2007年
1月3月4月6月7月8月10月11月12月
2006年
1月2月3月4月5月7月8月10月11月12月
2005年
1月3月6月7月9月10月11月
2004年
1月2月3月4月6月7月8月9月10月11月12月
2003年
2月6月7月8月12月
2002年
1月3月4月6月7月8月9月10月11月

>> 楓舎小屋便りへ戻る